2011/1/14
怖くないホラー映画から学ぶ元気な組織の創り方
【3:1の法則をビジネスで活用する―組織編(4)】
参考文献:
Barbara L. Fredrickson “Positivity” CROWN
Barbara L. Fredrickson & Marcial F. Losada “ Positive Affect and the Complex Dynamics of Human Flourishing”
Carroll E. Izard “The Psychology of Emotions”
まったく怖くないホラー映画を創り続けた監督がいます。ハリウッドで活躍したロジャー・コーマンです。私が中学生のころの映画監督ですから、ご存じの方は少ないかもしれません。徹底的なB級ホラーをとり続けました。監督としてよりも、ジェームス・キャメロンやフランシス・フォード・コッポラなどを育てたことで映画界に貢献しました。コーマンの映画を私が好きだったのは登場する女優さんが魅力的だったからです。ホラー映画ですから、場面は深夜が多く、したがって女優さんは胸もあらわなネグリジェ姿で登場します。亡霊がでてこようが、吸血鬼が襲いかかろうが、私はひたすら女優さんの胸を見ていました。
さて、コーマンのホラー映画がこわくなかったのは、まったくと言ってよいほど、不気味さがなかったからです。不気味さがなかった理由は無茶苦茶わかりやすかったことに由来しています。たとえば墓場の場面は決まったように霧が漂っていて、亡霊がでるな、と思っていると必ずでてきます。しかもその亡霊がどうして墓場をさまようになったのかについての説明があり、正体不明ということはまずありません。反対に、今まで観たホラー映画のなかで一番不気味だったのは、ロマン・ポランスキー監督の「ローズマリーの赤ちゃん」です。新婚夫婦が引っ越してきたアパートの隣人はよい人ばかりですが、不思議な事件がおきるうちに、新婚夫婦に想像を絶する恐怖が襲いかかります。ロジャー・コーマンと違って、大斧で首が切られるなどの血なまぐさい場面はありませんが、登場人物は正体不明、筋書きも予測がつかず、どんどん恐怖が募ってきます。
怖いホラー映画と怖くないホラー映画の差は、感じの悪い人と感じがよい人の差によく似ています。プレジデント誌の「感じが悪い人はなぜ感じが悪いか」の記事を書いたとき、対決型コミュニケーションの達人たちは「何を考えているのかわからない相手は感じが悪く、二度と会いたくないと思う」と口をそろえて言いました。対決型コンテクストで出会ったのですから、一方が勝てば、一方は負けるという緊迫した状況にあります。双方は不安に駆られています。そのような状況で相手が何を考えているのかわからないと、不安は一層募って、相手を不気味な存在と思います。組織がポジティブ情動とネガティブ情動の比率を3:1に維持するためには、双方の意図がわかりやすいということが必須になります。ロジャー・コーマン式の無茶苦茶わかりやすいコミュニケーションをメンバー全員が心がけることで、組織のなかでの不気味さが消え、明るく積極的に仕事に集中できるようになると思います。