2013/11/14タイムリーヒットの打てる選手の育て方
高校野球で、甲子園に出場するための、必須条件の一つが、ここぞというときに点がとれることです。チャンスがきても、凡打や三振で点がとれない状態が続くと、だんだんチームの元気がなくなり、イヤーなムードがチームにただよい始めます。そして思わぬエラーがでたり、四球を与えたことがきっかけで、塁にランナーがたまります。そこで、相手チームが見事にタイムリーヒットを打ち、2点、3点とられ、これが決勝打になるケースにしばしば出会います。勝てるチームはここぞというところでタイムリーヒットがでるが、負けるチームは、凡打の山。試合が終わってみると、負けたチームのほうが、勝ったチームよりもヒット数が多かったということもよくあります。メンタルコーチとしては、ここぞというときにタイムリーヒット(もちろんホームランでもよいのですが)を打てる心をもった選手を育てる方法を考え出さねばなりません。
高校野球の映像を分析していると、チャンスにヒットをうつ選手に共通する特徴があります。打席に立っているときに迷いが見られないことです。高校野球では、ほとんどの打者は、打つ球種とコースを決めてから打席に立ちます。たとえば、外角のカーブとか、内角のストレートとか、ねらい球を決めます。ねらい球を決めているのなら、迷いはないはずだと考える方もおられるでしょう。しかし、チャンスに弱い打者は、ウェイティングサークルに入るまでは、ねらい球を決めていますが、打席にたつと、そわそわし始めます。第一球にねらい球が来ないで、見のがして、それがストライクだったとたん、見送り三振をする恐怖に捉われて、たちまち、心に迷いが生じます。見送った球がボールであれば、ほっとしますが、心の余裕はそこまでです。第二球が再びねらい球でなければ、自分のねらい球が、相手のバッテリーに読まれたと思い、ねらい球に自信をなくします。そうなると、ベンチの監督に応援を求めて、さかんにベンチの方向をうかがうようになり、集中力がなくなります。集中できないことで、恐怖心がますます大きくなり、すべての球がねらい球にみえてきて、悪球やさそい球に手を出して自滅します。
チャンスに強い選手は、追い込まれても、ベンチのほうはあまり気にせず、相手投手に集中しています。神奈川県の強豪チーム横浜高校の4番打者の高濱選手は、まさにチャンスに強い選手の代表格だと思います。今年の夏の甲子園大会で彼のバッティングに注目していましたが、ほとんど全打席で迷いがみられませんでした。迷いがないから、全打席ヒットが打てるというわけではありません。迷いがなく打席に立つ習慣を身につけていると、チャンスが回ってきたときに、それが活きてきます。
迷いがないとはどのような心理状態でしょうか?選択肢が一つしかなく、それにしがみついている心理状態も、ある種の「迷い」のなさといえますが、固執していると表現したほうがぴったりくるでしょう。迷わず、しかも柔軟性があるこころの動きこそ、求めるべきものです。ハングリー精神が、大きな力を発揮するのは、迷うにも迷えない環境にいるから、異常なほど集中力が高まって、すごいことを達成できるのだと考えています。しかし、日本の高校野球の選手たちは、恵まれた環境で育っていますので、ハングリー精神を期待することはできません。どうすれば、迷いのない状態で打席に立つことができるのか?次回に詳しく考察します。