2016/12/22
メンタルコーチングは一筋縄ではいかない(1)
メンタルコーチングの仕事を始めて、15年以上になります。非常に奥深い世界で、ますます研鑽の必要性を痛感しています。ここ数年、スポーツの種類によってメンタルコーチングのあり方が違うのではないかと思うようになってきました。私自身は、メンタルコーチとしての出発点はスピードスケートでした。そのあと、高校野球、フェンシング、カヌー、自転車競技、陸上競技、ゴルフなどいろいろな競技のアスリートをコーチングしてきました。その経験から、スポーツを次のように分類しました。
<図をクリックすると拡大できます>
図-1で、チーム競技で自己探索型の競技として、シンクロナイズドスイミングを挙げていますが、シンクロナイズドスイミングの選手をコーチングした経験がありませんので、あくまで想像です。対戦相手と直接戦うことはなく、審査員の評価を通して、他のチームとスコアを競います。サッカーや野球と違って、肉体がぶつかり合いをして、相手の変化に応じて、瞬間的に身体を動かすことはありません。練習で鍛えた技術を、正確に再現することが求められ、自己探索型に分類しました。
コーチングのあり方としてどのような違いがあるのかを説明して見ましょう。
ゴルフとフェンシングは、共に個人競技です。ゴルフは、たくさんの選手が試合に 参加し、スコアを競い合いますが、一人一人が直接向かい合って、相手を倒して勝ち抜くという競技ではありません。自分のプレーに集中し、良いスコアを獲得していきます。芝生の状態、風向き、距離を正確に捉え、道具を含め、いくつかの選択肢からベストのものを選び、どういう打ち方をするのかを意思決定します。私個人の意見ですが、ゴルフは意思決定を重ねていくスポーツだと思います。経営者や政治家の仕事とよく似ています。企業人や、政治家にゴルフファンが多いのは、そのような共通の特性があるからではないでしょうか?ゴルフ選手に対するメンタルコーチングは、意思決定で重要な心理的な要素である、バランスのとれた思考習慣を身につけてもらうことにフォーカスします。
フェンシングは、相手の戦い方に応じて、臨機応変的に戦い方を変えていく必要があります。必要なのは、チーターやライオンのような、獲物を追い詰めて仕留める心と身体の動きです。相手の動きや気配から、視覚や意識を外すと、そのような動きができないので、ゴルフよりもはるかに、意識は外向きになります。相手の隙(すき)を、相手の動きと心理面から素早く発見できるようになることにフォーカスをあてます。対戦型のチーム競技と、対戦型の個人競技の 違いについては次回に書きます。