2017/1/7
対戦型のチーム競技と個人競技
メンタルコーチングはどのように違うのか?(1)
私は高校野球のメンタルコーチを10年以上続けています。その一方で、対戦型である剣道を高校時代から今日まで続けています。剣道選手のメンタルコーチの経験はありませんが、競技者としての経験から、どのようなメンタルコーチングが効果的かは判断できます。
メンタル的な視点からいえば、野球で最も重要なメンタル的要素は、情報です。さらに厳密にいえば、信頼に裏付けられた勝つための情報です。毎年、夏から初秋にかけ、3年生が引退し、2年生と1年生で構成される新チームが発足します。発足にあたり、主将が選ばれます。新主将は、大抵、メンタルコーチである私のところにやってきて、「良いチームワークを作るにはどうすれば良いですか?」と質問に来ます。オーソドックスなコーチングであれば、「あなたはどうすればいいと思う?」と質問をするのですが、私はあえて自分の考えを述べます。「良い チームワークを作り上げるためには、まず勝つことや。勝ちつづけたらなんとかなる。しかし負けてばかりだと、 チームワークなんか夢物語や」と、大阪弁で答えます。大阪弁は便利な言葉で、深刻な話を深刻に聞こえないようにする働きがあります。
勝ち続けることは至難の技で、それができたら苦労はないわけで、まともに話を聞いたら、新主将はものすごいプレッシャーを感じますので、 ちょっと冗談めかして言っています。しかし、その発言のねらいは、主将の意識を「勝つことに向ける」ことです。チームで戦う競技は、勝つために有効な情報をいかに早く伝達するかが重要です。しかし、その情報が信頼できるものでなければ、いくら早く伝えても、チームメンバーはプレーに集中できません。主将に対する信頼が強固であれば、チーム内に伝達される情報が生きた情報として機能します。主将に対する信頼は「勝ち続けること」から生まれます。だから新主将には、どうしたら勝てるのかを、真剣に考えてもらいます。真剣に考えれば考えるほど、有効な情報がチーム内に行き渡らないと、勝てないことに気付きます。例えば、バントというサインが出た時、一塁側に転がすのか、三塁側に転がすのかの判断は、普段から、バントのやり方についてどれだけ選手間で真剣に話し合っているかによって正否が決まります。そういうことは監督が指導するものだろう、と思う方もいるでしょう。しかし、監督が指導するだけでは不十分です。その理由を次回に書かせていただきます。