2012/8/30ロンドン・オリンピックをメンタルコーチの視点から考える(3)


 ロンドン・オリンピックの試合を観ながら、選手と監督、選手とコーチ、選手とトレーナーとの間で、どんな会話が交わされているのかを私は想像しています。選手のメンタル面の成長に対して、監督、コーチ、トレーナーの影響が大きいからです。「この選手は監督とうまくいっているのだろうか」とか、「彼女が属しているチームは、チームとしてうまく機能しているのだろうか」など考えながら観察しています。さらに所属団体の選手強化の責任者がどのような強化戦略をたてて、オリンピックに臨んでいるのかを考えています。

 ロンドン・オリンピックで、所属団体の強化戦略で注目すべきは、新体操の団体競技に出場した「フェアリー・ジャパン」です。彼女たちは、これまでの日本ではほとんど実施されたことがないくらい思いきった育成戦略が立てられました。全国から素質のある中学生、高校生を一か所にあつめて、1年を通しての合宿トレーニングを行いました。そのために全員を合宿所に近い学校に転校させました。ロシアからコーチを呼び、ハードトレーニングを実施しました。それだけでもすごいのに、ロシアからきたコーチがホームシックにかかって帰国すると、チームごとロシアに引っ越してトレーニングを積み重ねました。全国からオーディションで選手を選ぶやり方はAKB48と同じです。

 スピードスケートでは、中国がこのやり方に近い方法で、選手を育成しています。(まだ個人ベースですが)コーチ、練習場所、練習内容、練習相手がベストになるところで選手育成を考える時代が来ているのだろうと思います。「フェアリー・ジャパン」構想を考え、実行に移した競技団体の英断はすばらしいと思います。(スポンサーになったポーラ化粧品もすばらしいです。私も選手のためのスポンサー探して苦労していますが、このような思い切った戦略をサポートしていただける企業はあまりありません)「フェアリー・ジャパン」がもしあの戦略をとっていなかったら、決勝進出は難しかったのではないかと思います。今回メダルをとれませんでしたが、今のやり方を徹底すれば、リオでのメダルには手が届く可能性が大きいです。中途半端なことをしていては世界で勝てない時代です。三枝匡氏がビジネスで提唱されているように、スポーツも、「はじめに戦略ありき」です。そしてその戦略を実行できる、ビジネス感覚をもった指導者の育成も必要になっています。