2017/7/23

PTSD




 
 個人的なテーマで恐縮ですが、最近、軽微なPTSD(Post Traumatic Stress Disorder 戦争や天災などでショックを受け、その記憶がなまなましく再現され、苦しむ心の病)を経験したことを書きます。心理学の研究者としては貴重な経験でした。

 6月の上旬、バスに乗り遅れまいと自宅からバス停まで走りました。バス停で転倒し、気を失いました。気がつくと自分の乗るべきバスに乗らず、私を抱き起こし介抱する4、5人がおられました。その人たちに救急車を呼んでもらい、妻に電話をかけていただきました。人には親切にするものだとしみじみ思います。慌てて駆けつけた妻と一緒に救急車で病院に搬送されました。頭を強く打ったため記憶が途切れ途切れで、意識がはっきりしてきたのは頭の怪我の治療を終える前後です。治療の途中から尿意を催し、治療が終わるとお医者さんにトイレにいく許可をもらって診察室を一歩出たら、そこは待合室。たくさんの人が診察を待っていました。全員が僕の方を見てギョッとした様子です。変だなあと思いつつトイレに駆け込み、用を済ませ、手を洗いながら鏡を見てビックリ仰天しました。頭から上半身にかけ血まみれです。待合室に、心配して駆けつけた僕の娘がいました。娘は、僕の血まみれの姿を見て、『まるでゾンビだ』と思ったと、後日語ってくれました。

 ここからが本題のPTSDです。脳、頚椎、腰椎に異常がなく、元気に仕事をしているのですが、仕事に出かけるためバス停に近づくと軽いめまいを感じ、少し気分が悪くなります。深呼吸をすると、めまいは治ります。しかし、なんとなく不安な気持ちが残ります。転倒した時のことがフラッシュバックして、パニックに陥るようなことはありません。私の場合は14針縫う怪我でしたが、命に別状があるわけでもなく後遺症も皆無なので、この程度で済んでいるのだと思います。これが戦場や大災害で生命の危機にさらされたらこの程度の症状ではないと思いますし、 乗り越えるのは容易ではないと感じました。自分のささやかな経験からすると、「過去のことなのだから大丈夫」などと自分に声かけをしただけでは症状は消えない、つまり言葉に頼るだけの対処法では乗り越えられないと思います。世界中で、テロ、戦争、犯罪、災害で、PTSDで苦しむ方がたくさんおられます。その人たちは、日々、本当に苦しい想いをされていると実感しています。心理学の研究者として、やるべきことは何かを再考するきっかけとなりました。