2009/3/9

モチベーション(12)

モチベーション(12)
【The broaden-and-build theoryについて】
参考文献:Bethany E. Kok, Lahnna I. Catalino and Barbara L. Fredrickson
“The Broadening, Building, Buffering Effects of Positive Emotions”
【短期的な利益しか追求しない。】
バーバラ・フレドリクソンが提唱したThe broaden-build theoryのbroadenは「ポジティブな情動は、人間の視野や思考の枠組みを広げる働きをする」という意味です。この働きを証明するために、バーバラたちはとても面白い実験をしました。
実験参加者をポジティブな情動を起こす映像を見るグループ、ネガティブな情動を起こす映像を見るグループ、特別な情動を引き起こさない中立的な映像を見るグループに分けます。それぞれの映像をみたあと、右上の図1の図形を見せて、どんな種類の図形が見えますかと質問をします。

ポジティブな情動を引き起こす映像を観たグループは、個別の図形が合わさって一つの図形になっていることに気づく人が多かったのに対して、ネガティブな情動を引き起こす映像を観た人グループは、一つ一つの図形に注目する人が多かったのです。そこでバーバラたちは「ポジティブな情動は実際の視野も、思考の枠組みも、広げる働きをして、ネガティブな情動は反対に狭める働きをする」と考えました。この心の動きは私たちの日常生活に照らし合わせても頷けます。たとえば大好きな人にプロポーズをして、OKをもらったとき、わくわくして、楽しい未来の生活についていろいろと想像します。想像の翼が無限に広がっていくでしょう。反対に大好きな人に拒絶されたとき、沈み込んで、みじめな失恋のことばかり考えます。ネガティブな情動にとらわれた人は、目先の利益にだけ注目して、長期的な視野にたって判断ができなくなります。ポジティブな情動の使い方を心得た人は、状況がネガティブでも、広い視野に立つことや、選択肢をできるだけ広げることができます。短期的な利益だけを追求する企業が衰退するのは、経営者も含め、社員もネガティブな情動を間違って使い、ポジティブな情動をほとんど使っていないために、柔軟な思考や行動ができなくなっているからだと思います。
私自身のビジネス体験から考えて、危機的な状況下では
第一段階:ネガティブな情動を使って、危機的な状況を作り出した真の原因を探索する
第二段階:ポジティブな情動を使って、真の原因を解決する創造的な方法を考え出す
第三段階:ポジティブな情動を維持して、解決方法を実行し、危機的状況を乗り越える
第四段階:ネガティブな情動を使って、危機的状況を乗り越えたあとのリスクを予測する
という四段階で危機に対処しています。ポジティブな情動を使うにあたって、その前後にネガティブな情動を利用するのが、Emotional Intelligenceの極意ではないかと思っています。

図1Global-Local Visual Processing

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