2009/9/28

終わりよければすべてよし (1)

【3:1の法則をビジネスで活用する―個人編(3)】
参考文献: Barbara L. Fredrickson “Positivity” CROWN
Barbara L. Fredrickson & Marcial F. Losada “ Positive Affect and the Complex Dynamics of Human Flourishing”

心理学者として最初にノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマンの業績を以前紹介しましたが、カーネマンは人間は利益を得た喜びよりも、損失によって被る痛みのほうをより多く感じるという考えを提唱しました。カーネマンの考えに基づけば、私が提唱する「3:1の出来事主義」は間違っています。100円の利益を得た出来事を3件、100円の損失を被った出来事を1件で、ポジティブ3:ネガティブ1になると、出来事主義では考えます。しかしカーネマンの考えでは、100円で利益を得たときのプラスのインパクトと、100円の損失を被ったときのマイナスのインパクトの絶対量は同じではありませんので、出来事の比が3:1であれば、ポジティブに感じる度合いとネガティブに感じる度合いは3:1になりません。3:2とか1:1など、ネガティブなインパクトが強くなるでしょう。しかし、以前にも書きましたように、ややこしい計算をしなければ正確なところはわからないようであれば、実用的ではありません。どのレベルで感じたかと聞かれるよりも、何回感じたかと聞かれたほうが答えやすいので、ポジティブな出来事とネガティブな出来事が3:1の割合で起きるようにすればよい、と便宜的に考えたほうが、日常のビジネスやスポーツの現場では使いやすいはずです。「3:1の出来事主義はあくまで簡便法である」ことをご銘記ください。
つぎにポジティブな出来事とネガティブな出来事がどの順番でおきれば効果的なのでしょうか。
1. ネガティブ→ポジティブ→ポジティブ→ポジティブ
2. ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ→ポジティブ
3. ポジティブ→ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ
4. ポジティブ→ポジティブ→ポジティブ→ネガティブ

ネガティブな出来事が何番目にくるかで場合分けができます。「1日で3つのポジティブな出来事と1つのネガティブな出来事が起きたとき、その1日全体の印象で、もっともネガティブに感じるのはどの順番に起きたときでしょうか?ただしどの出来事もインパクトレベルの絶対値はかわらないという条件で考えてください」という質問に、あなたなら何番を選びますか。フレドリクソンの答えんは4番になります。なぜ4番になるかについては次回に解説しましょう。