2011/2/9
約束を守ることの大切さ
【3:1の法則をビジネスで活用する―組織編(6)】
参考文献:
Barbara L. Fredrickson “Positivity” CROWN
Barbara L. Fredrickson & Marcial F. Losada “ Positive Affect and the Complex Dynamics of Human Flourishing”
Carroll E. Izard “The Psychology of Emotions”
・奥村幸治「一流の習慣術」ソフトバンク新書
中学硬式野球チーム「宝塚ボーイズ」の監督奥村幸治さんが書いた「一流の習慣術」は、メンタルコーチだけでなく、ビジネスパーソンの必読書だと思います。その本のなかに(p76)にこんな記述があります。
「『皿洗いのできないヤツに鮨は握れない』という言葉がありますが、グラウンド整備は野球の基本です。手をかけて整備しないと、いつかグラウンドに裏切られることになると私は思います。トンボ(松下注;グラウンドの土をならす熊手のような道具)かけは地味な作業ですが、黙々と土をならすことで、練習開始に向けて集中力を高めるきっかけにもなります」
当然、宝塚ボーイズの練習グラウンドはよく整備されています。高校野球のあるOBから聞いた話ですが、練習試合に行くと、相手チームのグラウンドを見ただけで、試合の勝ち負けの予測がつくのだそうです。私は丸子修学館高校野球部のメンタルコーチもしていますので、ときどき練習試合に同行します。私の体験は限られたものですが、強豪高校のグラウンドはよく整備されています。強豪高校ですから、練習量は平均レベルの高校をはるかに超えています。グラウンドの使用時間も、回数も多く、グラウンドの土はかなり荒れるはずです。それにも関らずグラウンドはよく整備されています。チームの強さと、グラウンド整備にはどのような関係があるのでしょうか?もしグラウンド整備が行き届いていることと、チームの強さとに直接の因果関係があれば、グラウンド整備に力をいれるだけで甲子園優勝も可能になるはずですが、そんなことはまずありえません。間接的な因果関係があると考えたほうがよいでしょう。私は次のような因果関係を考えました。
グラウンドの整備が行き届いている→手抜きをする選手がいない→チーム全員が約束を守る→練習や試合にも手抜きをしない→チームメンバーがお互い信頼している→チームワークがよい→チームが強い
何層にも重なった因果関係ですから検証は難しいでしょうが、現場の感覚にはぴったりします。野球のグラウンドが広く、監督やコーチの監視の目がいくら厳しくても、すべてを観ていることはできません。隅々まできちんと整備するためには、チーム全員が監督やコーチが観ていなくても手抜きをしないことが必要です。トンボかけに手抜きをしないチームが、練習や試合に手抜きをするとは考えられません。常にメンバーが自分の言動に責任を持っているならば、相互の信頼関係が強固だと考えられます。相互の信頼関係こそがチームワークのコアです。チームワークがよく、練習にも試合にも手抜きをしないチームが弱いはずがありません。3対1を実現するためには、チームメンバー一人一人が約束を守ることは必須だと思います。