2011/12/16
ハーバード大学メディカルスクールのコーチ・カンファレンス報告(1)
2011年10月21日と22日の2日間にわたって、ボストンで、ハーバード大学のメディカルスクール、マクリーン病院、ICPA(The Institute of Coaching Professional Association)の3者が主催する研究会に参加しました。研究会のテーマは、Coaching in Leadership & Healthcareです。私の興味の焦点は2つありました。リーダーシップと健康をどう関連付けて、それがコーチングにどう活かすことができるのか、という問題にとても興味を持ちました。もう一つは今回の研究会では、ポジティブ心理学を元にしたコーチング手法が紹介されるという点にも興味がありました。ポジティブ心理学に関しては、ペンシルベニア大学でセリグマン博士のもとで研究をされている、宇野かおり先生からこの研究会に参加することを強く勧められたのも、参加のきっかけです。たいへん面白い研究会で、参加してよかったというのが正直な感想です。今回の研究会でとくによかった講演やワークショップをご紹介しましょう。
【ジム・レーヤ―によるLeadership & Well-being: The Power of Story】
ジム・レーヤ―は、スポーツのメンタルコーチとしてたいへん有名な人で、読者のなかにはご存知の人もおられると思います。スピードスケートの世界では、金メダリストのダン・ジャンセンのメンタルコーチとして名を馳せました。
彼の講演でもっとも注目したのが、エグゼクティブ・コーチングと健康を結びつけた点です。日本では、エグゼクティブ・コーチングと健康を結びつけて活動しているエグゼクティブ・コーチは日本にもいます。私が顧問をしているSNAコーチング協会の堺晶子さんもそのうちの一人です。コーチングの主眼点は、エグゼクティブが自分の健康とパフォーマンスとの関係について、自分なりのストーリ―をきちんと描けるようにコーチングし、さらにそのストーリー通りに、仕事とプライベートのバランスをとるように行動できるようサポートをするところです。講演ですから、具体的な手法をトレーニングするところです。ジム・レーヤ―は、若いころからその著書で、人間が持つエネルギーの重要性を繰り返し述べています。今回も健康に留意して、自分のエネルギー・レベルを高く維持するには、エネルギー・クライシスを乗り切る方法を身につける必要があると述べました。エネルギー・クライシスのレベルは以下のようです
レベル1:疲労
レベル2:生き延びることが精いっぱいで、恐れと怒りでメンタルが支配されている
レベル3:あれもこれもとたくさんの課題を抱え込んでいる
レベル4:目標が漠然としている
レベル1がエネルギー・クライシスの一番下の土台です。その上にレベル2があるという構造です。
コーチングのプロセスは、おそらく、レベル1から順番に解決していくと推測しています。(このことについて、レーヤ―が講演で述べたわけではありません。あくまで私の推測です)
コーチング・プロセス1:エグゼクティブの疲労をとる。疲労しにくい身体をつくる。
コーチング・プロセス2:恐れと怒りに対するコントロール法を習得する
コーチング・プロセス3:経営課題を絞り込む
コーチング・プロセス4:目標を明確にする。とくにエグゼクティブの価値観と目標を連動させる
それぞれのプロセスには、さらに具体的で、細かいステップがあると推測しました。ジョンソン&ジョンソンの実践例が紹介されました。健康とパフォーマンスの関連づける試みとしてたいへん興味深いものでした。