2012/8/5「ホメ渡部 ホメる技術7」について(5)
効果的にホメるための法則6について説明しましょう。
法則6:ほめる意図を無理にかくす必要はない。堂々とほめるほど、ほめ効果があがる。
「巧言令色すくなし仁」は良く知られている論語の言葉です。私は高校時代に、国語の時間にこの言葉を習いました。「口先がうまく、人から好かれようと愛想を振りまく人は、仁(思いやりの心を基とした徳)の心が欠けている」という意味です。国語の先生は、「それゆえ、おべっかをつかったり、ごますりをしてはいけない」と私たちに諭されました。私の父も口先のうまい人間を信用してはいけない、と日ごろから言っていました。きちんと考えれば、ほめること=お世辞ではないはずですが、なんとなく私は、ほめることが誠実さの欠ける行為と思いこんでいました。渡部建さんの本の監修をするまで、私自身はあまりほめない人間だったと思います。現在はほめることに対する罪悪感から解放され、気軽にほめることができるようになりました。
日本、とくに教育の世界では、先生は生徒をほめるよりもしかることが多いように思えます。「ほめて生徒を甘やかすとろくなことにはならない」となんとなく思いこんでいる先生もいます。最近、テレビで、アメリカのコロンビア大学から始まった、生徒をほめることで学力をのばす方法をひろめるNPOが紹介されましたので、日本の教育界も少し変化するかもしれません。
「ほめる」ことに対する罪悪感は、儒教の影響を受けた日本文化から由来していると思われますが、同時に、「ちょっとでもお世辞の気持が混じっていたら、不純だ」という完全主義の考え方からも来ていると考えています。しかし、ほめることとお世辞の境界線はあいまいで、お世辞の気持がまったく含まない賞賛はほとんどないと言ってもよいでしょう。アスリートや芸術家がすばらしいパフォーマンスをしたとき、私たちはこころからの賞賛を送ります。こういうときは、アスリートや芸術家とは利害関係や恩に着せるような関係はありませんので、純粋な賞賛といえますが、相手が自分の上司や先輩となると、多少のお世辞がまじったり、損得勘定は働くものです。立場が逆の場合を考えてみましょう。部下や後輩からほめられたとき、「まあ、半分以上はお世辞だ」とこころのどこかで思っている人は多いと思います。しかし、ほめられたこと自体は、うれしいものです。時間がたつにつれて、「お世辞だろう」という気持は消え、ほめられてうれしかった、という気持だけが残ります。けなすよりも、ほめたほうが、人間関係がよくなるのは、このようなこころの仕組みがあるからと考えられています。些細なこだわりを捨て、堂々と「ホメ」たいものです。
けなしたり、批判することが上手な人と接していると、「この人は、自分はほかの人よりも頭がよいと思っているのではないか」、と感じることがあります。人間の頭のよさほど、頼りのないものはないと私は信じていますので、けなすことが得意な人に出会うと、その人の先行きが心配になります。余計なお世話かもしれませんが・・