2019/6/27

どうすれば失敗から学ぶ習慣を身につけられるのか~成功するための3つの鉄則の1~(3)<不確実性に耐える>




熊本大学の吉田道雄先生は九州電力や三菱造船所で、事故対応で優れた業績を挙げた方です。一度先生の研究室にお伺いした時のことです。その冒頭で、吉田先生は「松下さん、ガンで絶対死なない方法を知っていますか」と質問された。「えっ!?」と私は答えに窮してしまいました。先生の答えはとてもシンプルなものでした。「自殺したらガンでは絶対に死にません。工場や発電所の事故も同じで、仕事をしなかったら、事故は起こらない。でも、そういうわけにはいかないでしょう。仕事をする限り、事故はゼロにならない。しかし工夫次第で、事故は、減らすことはできる」。フィンランド発のオープンダイアローグ的に表現すれば、仕事をする限りは、事故が起こるかもしれないという不確実性に耐えなければならないのです。

失敗から学べない人は、失敗を恐れるあまり、自分では決断ができないし、行動もできません。誰かの意見に従って決断したり行動するので、失敗しても、意見を言った「あいつが悪い」と他人のせいにしてしまいます。失敗から学べるのは、せいぜい「意見を求めた相手を間違えた」くらいです。

ある大企業でこんなことが起きました。その企業の役員だった人に聞いた話ですが、その人の名前を仮に鈴木さんとしましょう。ある日社長が交代になりました。新しく社長になった中村さん(仮名)は、社長就任前は切れ者で知られていました。ところが社長就任と同時におかしくなりました。鈴木さんは担当事業部の業績を上げるための提案をしたところ、中村社長は、提案の裏付けとなる資料を提出しろ、と言う。そこで鈴木さんは資料を作成し、再提案に行ったら、中村社長は、「必ず儲かる根拠となる資料を出せ」と言う。そんなやりとりを何度もしているうちに、ついに鈴木さんは我慢ができなくなり、「私が責任を持つからやらせてくれ」と中村社長に迫りました。中村社長は「君が本当に責任を持ってくれるならやってもいい。本当に責任を持つんだな」と言いだしました。その言葉を聞いた鈴木さんは、『この人は社長の器じゃない』と思いました。中村さんは、社長の重責に押しつぶされ、不確実性に耐えることができなかったのでしょう。一年後にメンタルダウンして社長を退任したそうです。

失敗から学べる人は、中村社長とは真反対の人で、成功するか、失敗するかはわからないけれど、自分が責任を背負って行動できる人です。