2011/2/24
「宝塚ボーイズ」見学レポート(2)
【~宝塚ボーイズのチーム方針~】
宝塚ボーイズのチーム方針として主に以下のような特徴があります。
(1) 保護者への要望や、了解事項
☆保護者は練習中のグラウンドには入れません。奥村さんを含む3名のコーチ以外は、練習や試合に口をはさむことはできません。
☆少年野球などでみられる、保護者からの差し入れは禁止されています。チームメンバーが必要とすることは、メンバー各自が責任をもって、準備しなければなりません。たとえば飲料水は、選手たちが持参します。夏場の練習日では5リットルくらいの水を選手が家庭から持参します。
☆弁当は保護者がつくり、子どもに持たせます。コンビニなどで購入した弁当は禁止です。
☆学校の成績が悪いと、レギュラーから外されます。宝塚ボーイズのコーチは、一人一人の学校の成績を把握しています。
(2) コーチは、現在でも、奥村さんを含め3名だけです。
☆ 理由:基礎を重視していますので、正しい基礎を子どもたちに教えることができることがコーチの条件です。奥村さんが正しいと思うことをすべて知っていて、それを子どもたちに伝えることができるプロのコーチ以外は指導できないシステムになっています。保護者がボランティアで、自分の経験だけをたよりに教えると、基本がおろそかになる傾向があります。このリスクを回避するためにも、奥村さんの考え方は正しいと思います。(カナダのスケート連盟が作成した、少年少女の指導マニュアルにも、表現は違いますが、小学生や中学生にもっと優秀なコーチをつける重要性が指摘されています。)
☆コーチ3人制の効果:
① 奥村さんの野球に対する考え方がコーチを通して、チームの隅々まで行きわたっています。
② 選手一人一人の基本動作がすばらしいです。基本ができていますので、高校や大学に進学しても、レギュラーの座をとる選手が多いのもうなずけます。
③ コーチの数が少ないので、先輩の選手が後輩に教えることで、コーチの数の少ないことを十二分に補っています。選手たちは後輩を教えなければなりませんので、学ぶ姿勢もおのずからできあがり、learning organization(※1)が出来上がっています。
(3) グラウンド整備
強い野球チームはグラウンド整備ができているというのは野球関係者にはよく知られています。宝塚ボーイズのグラウンド整理は素晴らしいです。
※写真をクリックすると拡大してご覧になれます。
上の写真は、グラウンド整備で使われる「トンボ」と言われる道具です。選手たちは、一番整備にとりかかりやすい方法を試行錯誤して、この置き方を考え出しました。保護者がグラウンド整備をするのはおかしいと奥村さんが考え、選手、監督、コーチが協力しあって、練習の節目節目にグラウンド整備が行います。高校野球の聖地甲子園球場はグラウンド整備のプロが整備しますので、最高のグラウンド状態です。それと同じ状態で日頃から練習をしておかないと、甲子園でプレーをするときに力を発揮することはできません。スポーツ心理学で、シミュレーションと呼ばれています。スポーツ心理学の観点からしても、グラウンド整備をきちんとしておくことは有意義です。同時に、これだけの整備をするためには、一人でも手抜きをする選手がいると不可能です。宝塚ボーイズには手抜きをする選手が見当たりませんでした。約束を守ることがチーム内に徹底されています。チームワークがよくなるとともに、自分自身や他人との約束を守ることを通してレジリエンス(※2)も高まります。
(4) 整理整頓
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靴、バッグ、グラブがきちんと並べられています。整理整頓が行きわたっています。日本の子どもたちはダメになったと世間では言われていますが、この写真をご覧になれば、そのような意見が間違っていることがわかります。奥村さんの野球に対する厳しい姿勢、それを徹底させようとする情熱、そしてそのことをきちんと理解する子どもたちが共鳴して、このような素晴らしい光景が生まれました。日本の子どもたちは、きちんと教育すれば、すばらしい力を発揮します。日本の子どもたちは、もともとすごい潜在能力を持っているのです。奥村さんやコーチから注意されなくても、先輩から後輩へきちんと整理整頓の大切さが伝えられ、チーム文化になっています。
(5) 道具を大切にする
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奥村さんはイチローのバッティング投手でした。イチローはグラブやシューズ、バットの手入れをよくする選手として有名です。子どもたちの靴やグラブを観てください。宝塚ボーイズの子どもたちは自分のグラブやシューズをぼろぼろになるまで使います。手入れをよくして、身体になじませることで、パフォーマンスをよりよくするというイチローのDNAが伝えられています。
次回はこの「宝塚ボーイズ」の練習風景について言及したいと思います。
※ 1・・・所属メンバーの自主的な学習を促進し、その相互作用を通じて競争力を維持するための持続的な変化を行う組織的能力を身に付けた企業や団体などのこと。
※ 2・・・困難な状況にもかかわらず,うまく適応出来る力。(resilience)