2009/2/23
モチベーション(11)
モチベーション(11)
【The broaden-and-build theoryについて】
参考文献:Bethany E. Kok, Lahnna I. Catalino and Barbara L. Fredrickson
“The Broadening, Building, Buffering Effects of Positive Emotions”
【女性には補助的な仕事だけをやらせる(管理職に占める女性の比率が少ない)企業はなぜポジティブな情動の使い方が下手だと考えられるのだろう】
人類の半分は女性ですから、女性を活用できない企業は、活用できる企業に比べて、大雑把に言えば、戦力の有効活用度は50%と考えられます。したがってそんな会社が衰退していくのは当然です。しかし、管理職に占める女性の比率が少ない企業は、なぜ、ポジティブな情動の使い方が下手だと考えられるのでしょうか。
心理学で表情認知におけるown-race biasという概念があります。同じ人種の顔つきは見分けがつきやすいが、違う人種の顔の見分けが難しいという心理現象のことです。外国に行くと、みんな同じような顔つきに見えて、顔が覚えにくいという経験をされたことはありませんか。一般的には自分の国の人の顔つきは見分けがつきやすいが、外国人の顔の見分けがつきにくいものです。ネガティブな情動を感じやすい人はown-race biasが強く、ポジティブな情動を感じやすい人は、人種が違っても顔の見分けがつく、つまりown-race biasが弱いという研究を2005年にフレドリクソンたちがしました。ポジティブな情動は、他人を自分の仲間として受け入れる働きを強め、ネガティブな情動を、他人を異質なものとして、一律的に排除する働きを強めると考えられています。ナチスを支持した人々の多くは、世界恐慌によって生活を脅かされた小規模な企業主や没落しつつあった中産階級だったと言われていますが、不安や恐怖にとらわれた人たちが、ユダヤ人や、精神的な病を持った社会的な弱者を排除しようとするナチスの思想に共鳴をしたのです。女性の管理職が少ない企業は、ナチスと同じとは言いませんが、ネガティブな情動を間違って使っていると思います。ネガティブな情動は、正しい危機意識を共有するために使うべきであり、人間を排除する方向で使うべきではありません。
見知らぬ他人に出会ったとき、警戒心を喚起するためにネガティブな情動を感じることは、身の安全を守るためには必要不可欠です。おそらく、警察の力が弱かった中世以前には、人間にとってポジティブな情動よりも重要な働きをしていたと思われます。しかし、現代ビジネスでは、新しい情報を獲得するために、できるだけ幅広いヒューマンネットワークを構築することのほうが、生き延びるためには必要になってきました。ポジティブな情動のほうが、ネガティブな情動よりも、効用が大きくなっていると考えられます。