2011/10/28
創造性開発の難しさ(5)
昔話をします。流行歌です。私が高校時代に流行していた流行歌は舟木一夫の「高校3年生」でした。全国の高校生のみならず、大人も子どもも歌っていました。今日の日本で、「高校3年生」に匹敵するほど、幅広い世代に歌われる流行歌(この言葉ですら死語になってしまいました)。人々の音楽に対する好みがばらばらになってしまい、少数の熱心なファンがそれぞれの好みの音楽を楽しむ状況になりました。したがって、国民的なヒット曲が生まれる環境は、現代日本にはありません。
上記の表では、Ⅱが、音楽の制作の領域です。音楽のプロデューサーは、多様化した情報から、特定の音楽ファンにヒットする音楽を企画し、それに適したアーティストを選ばねばなりません。しかしこのような状況は、さまざまな商品分野でも現れています。
実は、私の仕事の一つである、企業の研修プログラムの作成も同じような状況にあります。企業で働くビジネスパーソンのニーズが多様化して、誰にでも広く受け入れられるプログラムをつくることが困難になっています。ある特定のニーズをもったビジネスパーソンに焦点をあてたプログラムでないと、受講者の満足を得ることは難しいです。
たとえば、10年前であれば、コミュニケーション研修というテーマでプログラムを提供できました。しかし、現在では、傾聴プログラムとか、アサーションプログラムなど、特定のニーズをもったビジネスパーソンに焦点をあてなければなりません。一方で、ニーズはどんどん広がっています。私の場合は、優秀な人材開発のプロのグループをつくり、幅広く情報を収集したうえで、私が得意とする情動心理学をもとにしたプログラムをつくるようにしています。つまり、情報収集は幅広く集団的な思考で、プログラムの作成は私の個人的な思考方法でやっています。