2016/4/30 人生は思う通りになるものか?




  「人生が、あなたの思い通りになる3つの習慣」という書名と、「人生は悪戦苦闘の連続だ」という書名の本が書店に並んでいるとすれば、どちらの本を手にとる人が多いでしょうか?一度、そんな心理実験をやってみたいと思っています。実験結果は世間常識とは反対に出ると面白いでしょうが、多分世間の常識通り、前者の本を手に取る人が多くなるでしょう。出版社の出版企画に出しても、後者の本に出版のゴーサインが出されることはないでしょう。それはなぜなのでしょうか?「人生は悪戦苦闘の連続だ」という方が、大部分の人にとって、当たり前のことであって、当たり前のことを今さら手にとって読もうという心がけの人は少数だからです。当たり前の現実は、それが人間にとって不都合なものであるほど、多くの人は目を背けます。

 私自身、長く人生を生きてきて、しみじみ思うことは、「人生は自分の思い通りにいかないものだ」ということです。だからと言って、私という人間が陰気臭くって、世の中を斜に構えて眺める、へそ曲がりの人間ではありません。(少なくとも、自分自身はそう思っています) 『人生は自分の思い通りにいかないから、もっと挑戦して自分の新境地を切り開いていこう。そうでないと、さらに人生で思い通りにならないことが増えるぞ』と考えています。そういう考えがもとにあって、次々と困難な目標を自分で設定して、挑戦を続けています。そんな悪戦苦闘の人生は嫌だと思う気持ちは、正直言って、私にもありますが、自分の思い通りにいかない中で、悪戦苦闘を続けるのが、我が人生と割り切った方が、生きやすいのではないかと思います。

 このことに気づいたのが、アスリートとして成功する人たちは、エラーをしたり、ミスをしたり、試合に負けたりしても、あまり気にしていないというか、鈍感力があるというのか、とにかく失敗するのは当たり前だろう、という態度が垣間見えることです。心理学の用語では、レジリエンスがあると表現できるのかもしれません。アメリカや、アメリカから輸入されたレジリエンスを高める心理的な手法は、認知行動療法や論理療法や、NLP的な考え方が組み合わされて出来上がっています。しかし、その考え方のどこかに、考え方や行動を変えると、もっと楽しい、幸福な人生が実現する、という楽園願望のようなものが潜んでいるような気がして仕方ありません。これをやれば、人生はうまくいくという楽園願望があると、私たちは楽園で生きているわけではないので、かえって失望が大きくなって、落ち込んでしまうのではないかと、私は考えています。それよりも、『この状況では、これに挑戦して乗り切ってやろう。しかし、乗り切ったあとに、また自分の思い通りにならない苦難が待っている』と、<楽園願望なしの、悪戦苦闘が当たり前。それが人生の実態だ。それでどうしたと腹をくくった生き方>をした方が、生きやすくなるのではないでしょうか?