2014/1/29インドにて(1)
2013年12月7日から14日まで、ISLのリーダーシップ・プログラムの一環である「インド・トリップ」に参加しました。訪問先はムンバイとニューデリーの2都市です。知的刺激に満ちた、とても有意義な旅行でした。インド滞在中、私の印象に強く残ったことを書きとめてみたいと思います。
写真をごらんください。六本木ヒルズのような高層ビルですが、これが個人の住居だと聞かされびっくり仰天しました。インドのある財閥のトップの個人住宅です。この高層ビルには、彼と彼の親族の2家族しか住んでいないということですが、どうやって住んでいるのだろうというのが、びっくりの次に浮かんだ疑問です。家の中には、映画館もあります。数人の人間が大きな劇場で、最新の映画を観ているという光景は、なんとも奇妙な印象を受けます。オーソン・ウェルズの「市民ケーン」を思い出させます。新聞王になったケーンは晩年にお城のような大豪邸を建て、妻からも見放され孤独のなかで死んでいきます。しかしムンバイの大富豪は、市民ケーンのような孤独な存在ではないようです。僕たちを案内してくれたのは、ムンバイの大学院のMBAコースで学ぶ学生さんで、この大富豪の息子さんと知人で、ここの家族はとてもよい人たちと言っていました。
この大豪邸の奇妙なことは、豪邸の近隣の様子です。豪邸に面した道の向い側にはバラックのお店がありますし、周囲は貧しい家が並んでいます。物乞いのような人もいます。日本で、仮にこれだけの豪邸を建てるとすれば、宅地造成をして、近隣の環境を整えるはずですが、一切そのような配慮はされていません。まるで黒澤明の「天国と地獄」を思わせます。「天国と地獄」は、貧しい青年医師が、丘の上にある富豪の豪邸を仰ぎみているうちに、ねたましい気持になり、そこの息子を誘拐しようとしたことから事件が起きます。映画のテーマとなる感情は「ねたみ」でした。そこでMBAのインドの青年に「あなた方はこの大豪邸をみて、ねたみの感情は起きないのか」と質問をしましたら、「?」という感じで、「ぼくもこんな大金持ちになりたい」という返事が返ってきました。インドの人はもともとねたみの感情が薄いのか、それとも経済発展によって機会が与えられ、青年たちには、ものすごい上昇志向があるのか、よくわかりませんでした。