2020/1/31
どうすれば失敗から学ぶ習慣を身につけられるのか(5)
「失敗から学べない人は、失敗しない人である」と私は信じている。もう少し具体的に書かせていただくと、「失敗から学べない人は、失敗を恐れるあまり、行動をしない人である。行動しなければ、失敗をしようと思ってもできない」ということになるだろう。以前、熊本大学の吉田教授が、「ガンで死なない100%確実な方法は自殺することだ」と言われたことをご紹介したが、失敗を恐れるあまり行動をしない人も同じだと思われる。行動しないと失敗しようと思ってもできないので、失敗から学べる機会はない。これまでたくさんのエグゼクティブ・コーチングを担当してきたが、高い成果を上げているエグゼクティブは、例外がないと言って良いほど大きな失敗をして、そこから学んでいる。
大きな失敗をして陽の当たらない閑職に追いやられ、そのまま定年を迎えたり退職に追い込まれるリスクはある。しかし、そのリスクを小さくする方法がある。その一つが誠実であること。大きな失敗をすると「あれだけの失敗をしたのだから、あいつは無能だ」とか、「再起不能だ」と冷ややかに見つめる人は多数でてくる。しかし、失敗前も失敗後も腐らず、愚直に、出会う人に誠実に対応していればそのことを認めている上司や先輩がいるものだ。そういった人たちから、思いがけないチャンスが与えらる。なぜならば、仕事をするうえで最も重要な心理的な要素は相互信頼だからだ。信頼できないと判断された人間に再度挑戦の機会はめぐってこない。信頼とは①言行一致していること、②相手に迷惑をかけるような嘘をつかないこと、③約束を守ること、の3つが最低の必要条件である。
私は、これまでの人生で、倒産、失業など4回大きな失敗をしたが、失敗のたびに私をサポートし、挑戦する機会を与えていただいた恩人に出逢った。私を知る人は、私が頭が良いとか商売に長けているとか、リーダーシップがあるなどと思う人はいない。しかし「能力は高くないが嘘をつかない人間だ」とか、「人の顔に泥を塗るようなことをしない人間だ」と思われているという自信はある。私は善人とはとうてい言うことはできないし、頭が切れるわけでもない。しかし、力のない人間が世の中の苦難を乗り越えるための最大の武器は誠実であること、を身をもって体験した。
失敗から生まれるリスクを避ける二番目の心理的要素は、レジリエンスである。レジリエンスについては、次回までお待ちいただきたい。