2013/5/15ソチで感じたこと(3)


 日本を出発する前、1カ月くらい日本を留守にしますので、クライエントに「ロシアのソチに行きますので、しばらく留守をします」とご挨拶をしたら、「ずいぶん寒いところに行かれるのですね」というお返事が、たいてい返ってきました。私もスケート連盟から事前に現地調査をした人から話を聞くまでは、ロシア=寒い国という印象を持っていました。しかし、ソチの年間の気候は東京と同じくらいで、ロシアでは温暖な地方として知られています。ロシアに行く前にオランダでのワールドカップに参加していました。今年のオランダはとても寒く、ソチに到着したとき、その暖かさに驚きました。

 私が滞在したホテルからソチの市街地まではバスで40分かかります。道路事情がよくないので、交通渋滞が起きれば、もっとかかるということです。市バスに乗り、ソチの中心のバス停まで行きました。私はロシア語がまったくわかりませんので、ホテルで降りるバス停の名前をロシア語で書いてもらい、それをバスの運転手に見せて、目的地に着いたら、教えてほしいと身ぶりで伝えました。乗り合わせた乗客は親切で、目的地のバス停が近づくと、「この人が降りるよ」と運転手に伝えてくれました。バスはマイクロバスが多く、15名くらいで満員になってしまいます。

 ソチの市街地は日本の神戸を小さくしたような街です。小さな港があり、港を中心に商業地が広がっています。港から坂道を登っていくと、低い山腹が開発され、住宅地で、オリンピックを当て込んだのか、高層マンションの建設ラッシュでした。街には歴史的建造物が皆無に近く、30分ほど歩きまわっても、観るべきものがまったくありません。ホテルの廊下に、帝政ロシア時代の古い写真が飾ってありました。その写真では、たいへん美しい建築が撮影されているのですが、今日のソチでは、ソチ中央駅くらいが、歴史的建造物らしい面影があるくらいで、無機質なコンクリートの建物が並んでいます。おそらく帝政ロシア時代の建物は、ソ連時代に壊されてしまったのでしょう。ヨーロッパの街は古い町並みを残したので、数多くの世界遺産がありますが、ソチ周辺は、将来にわたって世界遺産に指定されることはないでしょう。

 ショッピングモールのようなところを覗いてみましたが、ロシアの独自のブランドが皆無で、個性のない安ものの商品かならんだ小売店か、グッチなどのヨーロッパのブランド店が雑然と軒を連ねています。韓国のソウルとはま逆です。ソウルは欧米のブランド店も数多くありますが、韓国独自のブランドや伝統的な商品を販売する店も多く、ウィンドショッピングするだけでも楽しいですが、ソチは歩き疲れるだけでした。JTBの人を案内しているロシア人(この人はモスクワでコンサルタント会社に勤務する女性)に聞くと、ソチはモスクワなど、ほかのロシアの都市と違って、アルメニアやアゼルバイジャンからの移民が多く、特殊な地域だと説明をしてくれました。したがってソチをみて、ロシア全体を推測することはできないと思います。ソチという特殊な地域においては、ロシア生まれの、競争力のある商品を創り出す企業はまだ生まれていないと判断しました。