2012/9/9メンタルコーチと保護者との関わり方(1)
高校野球の甲子園が終わりました。私も、2つの高校野球部のメンタルコーチをしていますので、試合がある日は、結果の行方が気がかりでした。
選手たちがメンタル的に安定するための、大きな要因の一つが家庭教育です。高校球児たちは、大人の一歩前の存在で、大人と子どもの両方のこころを持っています。実業団やプロチームと違って、家庭の影響はそうとう大きいです。保護者がどのように子どもに接しているかを、選手の行動を通して、推測しながら、コーチングをしています。選手のメンタル面で大きな問題があり、それが家庭に起因しているときは、監督とコーチの許可をとったうえ、保護者と面談をすることもあります。そのことを通して学んだ最大の教訓は、監督、コーチ、メンタルコーチには、保護者に対して、自分たちがしていることに対して、説明責任があるということです。
選手がレギュラーから外されると、抗議をする保護者が増えています。昔堅気の監督やコーチのなかには、「選手の起用に口をはさむとは非常識だ」と思う人もいます。私が子どものころ、子どもがレギュラーに選らばれなかったからといって、文句を言いに行く保護者はいなかったと思います。仮にそういう行動をする保護者がいたとすれば、世間の物笑いの対象になりました。監督やコーチ、学校の先生がすることは絶対に正しい、という信仰のようなものがありました。しかし、いまどき、そんな信仰を頼りに、クラブ活動を指導すれば、指導者はとんでもないトラブルに見舞われます。昔とは比較にならないくらい、保護者とのコミュニケーションが必要です。高校野球の世界でいえば、横浜高校の渡辺監督のようなカリスマ指導者なら、保護者も指導方法についてあれこれ言えないだろうと想像しています。(私は横浜高校のことはまったく知りませんので、想像の域を超えませんが)
レギュラーの選抜問題だけでなく、指導方法、指導方針など、あらゆることが説明責任の対象になります。高校野球ともなると、監督は保護者だけでなく、野球部に関わるすべての利害関係者に説明責任が求められます。監督が選手の指導に集中したいと思っているならば、監督に代わって説明責任を果たす人が必要になります。野球部部長とか顧問の存在が今まで以上に重要です。学校をめぐる問題は複雑化の一途をたどっていますので、学校教育の現場を知っている人だけがその役割をはたすことができます。ときどき、学校の現場を知らいない人が、指導者になりたいと相談に来られます。私は担任の経験をするとか、スクールカウンセラーの経験をしたうえで、指導者になるようにアドバイスをします。
以上のことは、高校野球だけでなく、青少年のスポーツ活動に携わる人に当てはまります。野球、サッカー、剣道、ラグビー、スケートなど、同じような説明責任構造が出来上がっています。したがってそのような指導者の役割を引き受ける人たちは、それなりの覚悟と知識と経験をもって、指導に臨まれることをおすすめします。