2020/3/28
どうすれば失敗から学ぶ習慣を身につけられるのか(6)-レジリエンス
失敗すると、たいていの人は落ち込むものだ。うらやましいことだが失敗しても全く落ち込まないどころか、かえって元気になる人もいる。その反対にちょっとした失敗でもものすごく落ち込んで、なかなか元気になれない人もいる。人間は他の動物と比較して多様性の幅が広いので失敗に対する心理的な反応も様々である。しかし、大半の人は失敗したらがっかりすると考えてよいだろう。
失敗しても落ち込まない方法を教えて欲しいと依頼されることがある。失敗に対する見方を変えるとか、失敗したことのメリットとデメリットをリストアップし、メリットの方に意識を集中させるなど、いくつかの方法はあるのだが、私自身はお勧めしていない。やり方を間違えると虚勢を張ったり、失敗したことを見て見ぬふりをしたりするリスクがあるからだ。それよりも失敗したら自分の気持ちに正直に従い、自然に振る舞うようにした方がよいとアドバイスをしている。
オリンピックのメダリストと長年一緒に戦ってきたが、彼らが試合に負けた時の落ち込みかたは半端ではない。競技に人生を賭けているアスリートにとって競技で失敗したら、笑って済ませる話ではない。落ち込まないことが優秀なアスリートの証ではなく、落ち込みからどれだけ素早く回復できるかが一流アスリートの証である。落ち込むことが自分のほんとうの気持ちだったら思い切り落ち込み、そこから出来るだけ、素早く抜け出せる方法を身につけた方が大切なことをコーチングの現場で体験してきた。経営者もアスリートも、一流の人は気持ちの切り替えが上手だ。苦しい状況から抜け出してもとの元気さを取り戻す心理的な力はレジリエンスと呼ばれている。
近年、レジリエンスの研究が盛んで、レジリエンスを高めるいろいろな方法が提案されている。その中でこれまでのコーチとしての体験から、2つの方法が効果があると私は考えている。一つはネガティブな感情を活用すること、もう一つは質の高いヒューマンネットワークスを構築し活用することである。この二つの方法について次回にご説明したい。