2014/7/24 甲子園(1)~強いチームをどうすれば創れるのか~
高校野球は、今、日本の各地で、甲子園を目指して熱戦を展開中です。私は5校の野球部のメンタルコーチの仕事をしていますので、このところ毎日のように、どこかで私がコーチングをしているチームの試合が行われています。 高校野球の公式戦では、メンタルコーチはベンチに入ることは出来ません。観客席から選手たちに指示することは禁じられています。試合当日にしなければいけない仕事は、ほとんどありません。テレビ中継があるときは、テレビで試合を観ます。試合場よりはテレビのほうが、監督や選手の表情が大写しになってよく観えて、心理状態が手に取るようにわかります。7月の甲子園予選と9月と10月の選抜大会予選の合間がメンタルコーチの仕事をする期間です。特に野球の練習をしない冬場が重要です。
高校野球のお手伝いを始めて、8年目を迎えています。8年の間に6人の監督の下で仕事をしてきました。門前の小僧よろしく、野球にも詳しくなりました。特に強いチームの作り方には6人の監督に共通するものがあります。
スポーツも、ビジネスも、
①優秀な人材を集めるための採用活動、
②能力開発、
③優れた戦略、
④巧妙戦術、
の4点は強いチームを創り上げるためには、欠かすことは出来ません。
4つの中で、優れた監督たちがもっともよく似ているのが①の採用活動、すなわちスカウティングです。強いチームを作ろうとすれば、小学校と中学校、リトルリーグに人的なネットワークをしっかりと張り巡らさねばなりません。私が担当する高校は、いずれも、県外生(野球留学生)を受け入れていませんので、ネットワークは県内に限られます。身体能力の高い、ノビシロのある選手を優先的にとります。軟式野球にも逸材がいますので、目を光らせる範囲はさらに広がります。好みの選手のタイプは監督によって違いがあります。
不思議なことに、ビジネス界は高校野球ほど採用活動に熱心ではありません。高校野球では、監督や野球部長は足繁く目をつけた選手の練習や試合を見に行きますし、指導者からもヒアリングをします。保護者にも会いに行きます。企業では家庭環境の調査は禁止されています。しかし、企業は面接や知識テストだけに頼りすぎではないかと思います。観察する機会を増やし、学生がどれくらいノビシロがあるのかを見極めるべきです。「何万人も応募者があるので、一人ひとりにそれほど手間をかけられない」と採用担当者から反論されるかもしれませんが、高校野球の監督の選手獲得の熱意に比べれば、熱意不足は否めません。私は応募数の多寡で熱意が決まっているとは思えないのです。
採用担当者は、その企業に適さない人財を採用しても責任を取らなくてよいのが普通です。それに対して、高校野球は2年も経てば、よい選手が取れたかどうかが、試合の結果として表れてしまいます。結果責任の重さの違いが、企業と高校野球の採用の真剣さとキメの細かさの違いとなっている、と私は考えています。