2017/3/19

指示待ち部下と、自ら考え行動する部下




 スーザン・ケイン内向型人間のすごい力』は、自分の性格が内向型と思っている人にとって、納得性も高く、勇気づけられる良書です。この本を読むキッカケは、心理学の研究的な興味からではなく、個人的な悩みからです。私は、ユング心理学で言われている、内向型、それもかなり強い内向型の人間です。70年以上、この性格で人生をやり繰りしてきたので、今更性格を変えようとは思いませんが、大勢の前に立つとか、何かの集まりで弁舌さわやかに喋ることは苦手です。静かな環境を好み、一人で本を読んだり、物語を夢想したり、散歩することが好きです。一番避けたいイベントは、パーティや団体旅行です。ご好意から、飲み会や旅行に誘っていただくのですが、6人以上の人が参加する集まりは、原則的に、お断りしています。居酒屋のコンパは、まるで拷問です。私と同じ内向型の方なら、私の気持ちをご理解いただけると思います。


外向型と内向型の違いの詳細については、インターネットでもたくさんの記事がありますので、そちらに譲りたいと思います。蛇足ながら、トランプ大統領は外向型の典型だと思います。エネルギッシュな活動家で、世の中の活動に積極的に関わることが好きなところは、強い外向性を示しています。ただし、彼の言動に問題があるのは、外向的な性格から由来するものではなく、ほかに原因があるからです。


スーザン・ケインの本の中に、リーダーとフォロワーの関係について、興味ふかい記述があります。一般的には社交性に富み、活動的な外向型の人がリーダーに向いているとされていますが、スーザンによれば、外向型のリーダーが力を発揮するのは、部下が指示待ち人間の時で、内向型のリーダーが真価を明らかにするのは、部下が自ら考え、行動する能動的な人間の時だということです。私自身のリーダー体験を振り返っても、うなずける意見です。私は30歳のころ、零細な企業を経営していました。その時の部下の中で、社員の大半は指示待ち人間でした。当時は、高度成長期で、大企業でさえ、人手不足でした。このような言い方をすれば、当時の社員には失礼になるのですが、零細な企業で働こうとする人たちは、自信もなく、特別な技能や知識を持たない人が多く、「命令されること」に慣れた人たちでした。私は典型的な内向型リーダーですから、彼らに強く指示をしたり、積極的にコミュニケーションを取ろうとしませんでした。そのため、非常に効率の悪い組織ができていた思います。60歳になってベルシステム24の執行役員として勤務をした時は、経営者の園山征夫さんの薫陶を受けた、自律的な能動型の部下が多く、とてもやりやすかった記憶があります。


自分が内向型人間で、リーダーシップで悩んでいる方には、部下を選ぶ時は、自ら考え、行動する人を部下に選んだほうがよいでしょう。また部下育成も、部下の自律性を育てる方針で臨んだほうがよいでしょう。反対に、外向型のリーダーは、指示命令をして、ダイナミックに組織を動かすことが好きですから、あまりにも自立性が高い人を部下に持つと、やりにくさを感じるかもしれません。