2015/1/14 怒りの効用





 人は腹が立つと、言葉や行動が粗暴になりがちです。子どものとき、腹立ちまぎれに、乱暴な行動をして、親に叱られた経験をした人は多いと思います。親に叱られたせいか、「怒り」を言葉や態度で表現することはよくないと思っている人は多いのではないでしょうか?社会人になっても、怒りは悪者扱いです。上司が部下に怒りを示せば、パワハラだと言われるし、部下が上司に怒りをぶつけたら反抗的だと思われます。しかし、スポーツでは、怒りは重宝な感情です。

 大切な試合になればなるほど、不安と緊張が強くなります。不安や恐れを緩和する感情が怒りです。心の底から怒りがわいたときは、どんな相手であろうとも立ち向かっていった記憶がある人は少なくないと思います。怒れば、怖さを忘れて相手に立ち向かっていきます。相手が強敵のとき(たとえばライオンのような猛獣を思いだしてください)、選択は立ち向かうか、逃げるか、身を隠すかの3つがあります。逃げようと思ったとたん、ものすごい恐怖が襲い掛かってきて、頭が真っ白になり、膝のあたりががくがくになります。身を隠すときは気配を消そうとするため、身体を固く縮めます。逃げるにしても、身を隠そうとしても、筋肉が緊張して、怖れに圧倒されます。しかし、立ち向かおうと覚悟を決めれば、思いがけない力が生まれてきます。

 スポーツでは、例外がなく、立ち向かっていくことが奨励されるのは、立ち向かっていけば、逃げたり、身を隠したりするよりも、身体がよく動くからです。動物は「戦う」覚悟を決めると、最高のパフォーマンスを発揮します。(2014年のインターネットで公開された動画で、子どもを救うために、犬に体当たりした勇敢な猫が話題を集めました)スポーツの、ここ一番の大勝負で、緊張しても、不安になっても、大丈夫です。立ち向かっていけばよいのです。

 野球などの相手があるスポーツであれば、自分の全てのエネルギーを、怒りとともに相手にむけます。記録をねらうスピードスケートのような競技では、自分にむかって、「どんなことがあっても挑戦をし続ける」と言い聞かせて、逃げようとする自分を感じたとき、そのような自分を叱りつければよいのです。(叱りつけるだけにしてください。こんな自分ではだめだと、自分を責めてはいけません)

 注意すべきは、立ち向かう=攻撃と勘違いすることです。このことについて、次回書かせていただきます。