2017/2/5

イスラエルで感じたこと




  1月21日から27日まで、ISLが主宰する研修旅行に参加しました。ISLは野田智義さんが創設したリーダーシップの教育機関です。私は、ISLが設立された翌年から参加し、今日まで、幹事の一人としてお手伝いをさせていただいています。野田さんが主宰する研修旅行は、きわめて高品質で、参加するたびに、毎回とてもたくさんのことを学べます。


 今回の旅行は、スタートアップ・ネーションとして、ハイテク企業がどんどん誕生しているイスラエルの現状を、イスラエルのビジネスパーソンと対話をしながら学ぶことが目的でした。イスラエルで起業し、ナスダックの証券取引所に上場している企業数は、ヨーロッパ大陸からの上場総数を上回っています。(『アップル、グーグル、マイクロソフトはなぜ、イスラエル企業を欲しがるのか?』ダン・セノール&シャウル・シンゲル著 宮本喜一訳 2012年 ダイヤモンド社 p17)そのなかでも特に業績の高い、Mobileye,Ourcrowd社などの企業を訪問し、意見交換をしました。企業だけでなく、政府機関、大学も訪問しました。またスタートアップ・ネーションの誕生の背景となる、ユダヤ教やイスラム教、キリスト教関係者とも対話をしました。私は心理学の研究者ですから、ハイテクのことはよく分かりませんでした。しかしその素地である、イスラエルの人たちの心理状態や文化的背景はとてもよくわかりました。
イスラエルのハイファにあるインテルの開発拠点で、訪問企業の一つです。  インテルの救世主と言われる製品開発をしたのが、ここのチームです。(写真をクリックすると拡大されます)

 イスラエルが、高度なハイテク国家になった心理的、歴史的、文化的背景を、私なりに分析してみました。

背景の1.ナチスによるホロコーストの記憶が鮮明であり、二度とあのような悲惨な状態にならないため、自分たちの国家を守り抜くという、ものすごい決意があることです。現在もアラブ諸国に囲まれ、いつ攻撃を受けるかわからない状況ですから、危機意識は、ものすごくあります。国を守るためには高度な技術が必要ですし、軍備を整えるためにはお金が必要です。そのためにたくさんの優秀な企業を生み出して、高度な技術と豊富な資金を持つ必要があります。

背景の2.背景1と関連しますが、国防のために、徴兵制度を敷かれていて、高校を卒業した男女は3年から6年の兵役に就きます。兵役に就くと、様々な技術教育を受けます。その教育財産を持って、若い人たちは大学に進学しますので、大学生の質は高いです。また8200部隊というエリート部隊がいて、情報戦略を担当しています。この部隊を卒業した人たちが、軍隊で開発したハイテクをもとに起業します。私たちが出会った起業家やビジネスパーソンの多くは8200部隊出身者と聞きました。

背景の3.ユダヤ人はこの2000年間、差別され、迫害を受けてきました。そのために家庭での教育で、「差別され迫害されたら、能力で見返せ」と子ども達は教えられます。とくに「学業では負けるな」という家庭教育を受けます。ユダヤ人のお母さんは、日本の教育ママの比ではないくらい、勉強しろ、勉強しろと、子どもに迫るとのことです。

 要するに、ホロコースト、軍隊、そして厳しい家庭教育がイスラエルの発展の原動力だと思いました。
イエスがヨハネから洗礼をうけた場所です。(写真をクリックすると拡大されます)  ヨルダン川も最近は、生活排水で汚れがひどくなっていると聞きました  川向うはヨルダン領です

 幸いというべきなのでしょうが、日本人は、ユダヤ人のようなひどい目にはあっていませんので、ずいぶんのんきです。イスラエルのようなやり方ではなく、のんきで、のほほんとした良さを活かしたビジネスで差別化していくほうが、よいのではないかと思います。
 「岩のドーム」と呼ばれるイスラムの聖地です。(写真をクリックすると拡大されます)