2014/10/2 感情心理学から考える集中力を増す方法
コーチングをしたり、研修の講師を務めていて、「不安をうまく活用してください」と提案することがありますが、意外な発言と受け取る方が多いです。感情心理学では、感情は役に立つものという立場をとる研究者がほとんどです。ネガティブな感情、ポジティブな感情という表現はやめようという人もいるくらいです。
仕事に集中できないと悩む人の話を聴いていますと、世間一般でいうネガティブな感情を感じてはいけないと考えている人が多いことに気づきます。おそらく、どこかで、「そんなネガティブな気持ちを捨てて、もっとポジティブな気持ちになりなさい」というようなアドバイスを受けた経験があるからでしょう。私は、気落ちをしたり、不安で気持ちが動揺している人のコーチングをするときは、「今、落ち込んでいるなら、落ち込んでいる気持ちをそのまま受け入れてください。落ち込んでいる気持ちを拒否したり、無理に押さえつける必要はありません」とアドバイスをします。(コーチングは、基本的には、コーチングを受ける人が、自分で考えたり、自分の意思で行動することを大切にしています。しかし、人の心理について十分な知識がない人も多いですから、そのような人たちには、押しつけにならないように注意しながら、一種の心理教育を行います)。無理に抑えつけようとすればするほど、その感情が強くなる心の機能があります。例えば、「お化け屋敷」に入場したとき、「怖がってはいけない」と自分に言い聞かせても、まったく効果がないどころか、逆効果に終わったことはありませんでしたか?
目覚まし時計のなかに、目覚ましが鳴っているにも関わらず、眠り続けていると、だんだん目覚ましの音が大きくなる機能がついているものがあります。感情は、だんだんと音が大きくなる目覚まし時計なのです。何かが起きたとき、考えるよりも早いスピードで、脳に到達する信号が感情です。その信号を無視しようとすると、どんどん信号音が大きくなります。信号が出ないように、つまり感情を感じないようにすると、周囲の状況を正確に捉えることができなくなりますので、かえって危険です。目覚まし時計は、目をさまして、アラームをストップさせれば、音はとまります。感情も同じで、しっかり受け取りましたということを脳がわかると、ネガティブな感情でも弱くなります。感情は思考ほど長続きはしません。集中力がないのは、いろんな感情と雑念が次々と沸き起こっているからです。感じている感情をそのままそっくり受け入れますと、集中力の妨げになる感情が消え、それに伴い雑念の焦点があってきて、集中力が増します。感情を受け入れることを、ぜひトライしてください。そこ効果に驚かれると思います。