2008/12/5

モチベーション(6)

情動が生まれる原因は、(1)神経伝達物質や脳の働き (2)痛みや性的な欲求、疲労などの生理的な感覚 (3)思考のプロセスの3つが考えられます。(注)ビジネスでトレーニングやコーチングの対象になるのは、主として(3)の思考のプロセスです。思考は人間が意識的にコントロールできますし、体系的な教育によって開発することができるからです。3つの原因は独立しているのではなく、相互に関連しています。たとえば、連日連夜の残業で疲れていますと、思考がまとまらず、それが焦りや不安の情動を引き起こします。また疲労が重なりますと、神経伝達物質の分泌が悪くなり、うつなどのメンタル的な病気の引き金になるリスクが大きくなります。しかし、3つの原因をすべて網羅して、能力開発を考えると非常に複雑になります。(3)の思考のプロセスを効果的にものに変えることに焦点を絞ったほうが、シンプルでわかりやすく能力開発ができます。情動をコントロールするためには、共感を通して多様な視点にたって考えることの重要性を強調したのも、思考プロセスがさまざまな情動を生み出す原因になっていると考えているからです。
情動が生み出される思考プロセスのなかでとくに重要なプロセスとして

☆ 評価 Appraisal
☆ 原因帰属 Attribution
☆ 記憶 Memory
☆ 期待 Anticipation

が挙げられます。それぞれの働きをうまくマネジメントすることで、ビジネスですぐれた成果に結びつく情動を創りだしたり、維持することができるようになります。ビジネスの成果に結びつく情動は、必ずしもポジティブな情動に限らないと再三述べてきました。思考が原因となって生まれる情動を、ビジネス現場での問題解決の体験から、筆者は4つに分類しています。
促進情動;積極的な行動を推進をしたり、多様な視点に立って考えることを促進する情動。喜びや共感など。
抑制または回避情動:自分あるいは相手の行動を抑制したり、情動の対象から遠ざかる行動を促進する。恐れ、不安、恥じらい、嫌悪など。
攻撃情動:自分が望んでいることの実現を妨げるものを積極的に除去しようとしたり、相手の攻撃を誘発する行動。怒りや軽蔑など。
中立的情動:促進と抑制のどちらにも働く情動である。人間関係を良好にするか、悪化させるかも、その他の情動との組み合わせによって変わる。驚きや悲しみなど。
上記の4つの情動を、相手の反応やビジネス状況に応じて、効果的に使い分けができる人は、ビジネスで成果を挙げていく確率が高くなるでしょう。
抑制や回避情動を感じることで、自分を責める人がいます。「自分は相手に怒りを感じている、まだまだ修行が足りない」と自分の至らなさを反省することは、宗教家であれば立派なことかもしれませんが、ビジネスパーソンは「怒りを感じて、どう行動すれば、または怒りを動表現すれば、成果に結びつくか」を考えるべきでしょう。

情動発生モデル(松下による仮説)

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