2009/1/27

モチベーション(10)

モチベーション(10)
【The broaden-and-build theoryについて】
参考文献:Bethany E. Kok, Lahnna I. Catalino and Barbara L. Fredrickson
“The Broadening, Building, Buffering Effects of Positive Emotions”

創造性の主な2つの機能は、

①思考の枠を広げ、多面的にものごとを見たり考えたりする 
②まったく違う要素を結びつけ、新しい組み合わせを考える

ことです。Isenは②についても実験で証明しようとしました。実験の前に、あるグループはポジティブな情動を誘発するような映画を観ます。もう一方のグループはネガティブな情動を誘発するような映画を観ます。そのあと、実験者がある言葉を言いますと、その言葉から連想する言葉を被験者に言ってもらうという作業をしてもらいます。その結果、ポジティブな情動を誘発する映画を観た人のほうが、ネガティブな情動を誘発する映画を観た人よりも、よりたくさんの言葉を連想できることがわかりました。Isenたちはポジティブな情動は、違う要素を結びつける認知の働きを促進すると考えました。

Isenたちの先行研究に興味をもったバーバラ・フレドリクソンたちは、ポジティブな情動の本格的な研究を始め、broaden-build theoryを打ち立てました。
ビジネスに関連づけながら、broaden-build theoryを説明していきましょう。
ポジティブな情動を説明する前に、ネガティブな情動についてもう一度触れます。ネガティブな情動の利用の仕方が下手な企業で、特に目につく特徴を5つ挙げます。

1. 経費の使い方がめちゃくちゃで、いくら稼いでも、赤字の垂れ流しが続く
2. 思いつきで仕事をする人が多い
3. たくさんのプロジェクトが開始されるが、たいていのプロジェクトは完成しないまま、自然消滅に近い形で終了する
4. 本業に無関係な事業に手を出したがる
5. 責任の所在が不明確である

 ネガティブな情動のなかでも、とりわけ危機意識がありません。ここではネガティブな情動の使い方も企業経営には重要な役割をはたしていることだけに触れ、本題であるポジティブな情動に移りたいと思います。

 ポジティブな情動の使い方ができない企業の5つの特徴をあげてみましょう。

1. 女性には補助的な仕事だけをやらせる(管理職に占める女性の比率が少ない)
2. 短期的な利益しか追求しない。(今回の大恐慌で、企業のリストラ策の内容を見れば、その企業の将来が予測できる。経費を減らすことだけを考えている企業には未来はない)
3. 3. 企業で働く人たちの間で、相互に尊敬しつつ、言いたいことが言える雰囲気がない。しがたってほんとうにお客様を大切にする気持ちが育たない(山中鏆氏の教え)
4. 「やってみなはれ」精神がない
5. とにかく暗い

5つの特徴それぞれはbroaden-build theoryに基づいて、次回から説明します。