2009/4/27
モチベーション(14)
モチベーション(14)
【The broaden-and-build theoryについて】
参考文献:Bethany E. Kok, Lahnna I. Catalino and Barbara L. Fredrickson
“The Broadening, Building, Buffering Effects of Positive Emotions”
ポジティブな情動が乏しい企業は「やってみなはれ」精神がみられません。「やってみなはれ」はサントリーの創業者鳥居信治郎氏の言葉であり、サントリーの企業精神として今日まで受け継がれています。繁栄している企業も、傾き始めますと、「やってみなはれ」から、「やってもええけど、責任持ってくれるか」に変わり始めます。衰退の度合がひどくなると「あれやるな、これやるな」と経営者が言い始めます。利益がなくなれば、ふところ具合が悪くなりますから、不安な経営者の気持ちはわからないわけではありません。そんな心理になったときは、商売をやめるか、商売替え(ビジネスモデルを変える)の時期がきていると判断すべきでしょう。無謀なことをしてはいけないことはもちろんですが、やってみてもうかるかどうかがわからないからこそ、商機があるわけです。
株主資本主義の悪しき論理は、経営会議などで、「利益があがる根拠を示してくれ」という意見になって現われます。「株主から大切なお金を投資しているのだから、いい加減なビジネスはできない」という正論に押しまくられ、創造的な商品やビジネスのネタがどれだけ多く葬り去られたでしょうか。株主資本主義の正しい論理は、株主原理主義というべきもので、株式会社の原点に戻ろうという考え方です。株式の始まりは、航海ごとに出資者を募り、航海が終わる利益を出資額に応じて分配しましたが、当時は船が難破して、出資したお金が戻らないことを覚悟しなければなりませんでした。株主としての気概を思い出し、投資した会社の経営者に「やってみなはれ」と声をかけてほしいと思います。
ポジティブな情動があれば、なぜ「やってみなはれ」と言いやすくなるでしょうか。以前にポジティブな情動が人間の視野を実際広げるという実験をご紹介しました。ポジティブな情動は視野を広げるだけでなく、思いつくアイディアの数も増やしてくれます。バーバラたちは2005年にこのことを確かめる実験をしました。楽しくなる映画を見せるグループと、気持ちが落ち込んだりする映画を見せるグループにわけ、それぞれ映画を見終わったあと、自分たちがやりたいことをできるだけたくさんリストアップしてほしいという課題を与えます。楽しくなる映画を見せられたグループのほうが、そうでない映画を見せられたグループよりも、リストアップした数が多いという結果がでました。
ポジティブな情動は「何かやりたい」という考えを引き起こし、「やりたいもの」を増やす働きをしていると考えられます。旅行が楽しいと、普段食べないような珍しい食べ物にトライしたり、空中を飛ぶパラセーリングにチャレンジしたりします。企業でポジティブな情動を感じる人が多くなれば、「やってみなはれ みとくんなはれ」と思う人も増えていくのでしょう。